愛、アムール
2018.2.23
あと数日で、これまでのサイト(http://ayuko.petit.cc/)を閉じることにしました。
契約をやめるとすべてのデータが消えるので、ふと日記を読み返してみました。
以下の文は2013年3月のある日の日記です。割と本音を書いています。
* * * * *
映画「愛、アムール」を観た
なぜこの映画を見たか
主人公のアンヌ役を演じた、エマニュエル・リヴァさんが義母のマミーちゃんにそっくりだったから
色白でしみひとつなく、しわもほとんどなく、
どの病院に行っても「お母さん、きれいなおばあちゃんね」と褒められた自慢の義母は、去年5月に天に召された
自分のほんとうの親よりも、私はマミーちゃんのことが好きだった
祖母と孫のような年の差だったということもよかったのかもしれないが
なによりも、マミーちゃんは優しくて楽しい人だった
ユーモアがあって笑顔もあった
自分のわがままをいっさい言わない人だった
(もちろん、嫁の私に気を使っていたのだと思うけれど)
マミーちゃんが東京に来てくれたおかげで
「ほんとうの家族の風景」というものを生まれて初めて知ったような気がした
すごく嬉しかったし幸せだった
同居から最期までの5年半、ほんとうにいろんなことがあった
どきどきするようなことがたくさんあった
経験したことはすべてが初めてのことだったけれど
でもおかげで、病院も病気もICUも介護も怖くなくなった
病院を転々としたあと、マミーちゃんを安心して預けられる病院がみつからず
自宅に戻して介護を始めた
覚悟はしていたけれど、精神的に壊れることが多くなった
無意識で声がとまらないマミーちゃんにどなってしまったことが数回ある
あのときは、自分で自分をとめられなかった
なんでそんなことをしてしまったのだろう
私は最低だと思う
* * * * *
この映画は、病気のアンヌを介護していく夫の献身的な姿がストーリーの半分以上を占める
病気の進行に伴い、アンヌはまともではなくなってゆき、夫の負荷は高くなってゆくばかり
アンヌとマミーちゃんが重なって見えてしまい、ほぼ全編涙がとまならなかった
介護の大変さも思い出したけれど、
介護されるほうの辛さも映画から伝わってきたからだ
ある日、おもらしをしてしまい、強烈なショックを受け自分を恥じるアンヌ
泣き崩れ興奮するアンヌをなだめる夫
マミーちゃんも同じだった
おもらしやパンツのなかで尿が出てしまったことをとても恥じていた
私の知らない間に、生理用のナプキンをヘルパーさんに買ってきてもらい、
いつもそれをパンツにつけるようになった
昨日までできていたことが今日はできない
人間としてステージが落ちたそのショックは大きいはず
人はそうやって自分の老いを静かに受け止めてゆくのだろうか
この映画は音楽もなく、淡々とストーリーが進んでゆく
まるでドキュメンタリーフィルムのよう
淡々としている時間の経過のなかで突然フィナーレがくる
切なかった
でもあれは夫の最後の「愛」だと思った
マミーちゃんは90歳を目前にこの世を去った